ロビーで待たされること約30分。
未だパスポートが帰ってくる気配はない。
暇つぶし用に持参した本を読んだり
日記を書いたりして時間を潰す。
目と鼻の先では審査官が相変わらずの態度で旅行者を質問責めにしている。
周りを見渡すと、同じように待ちぼうけをしている人たちがちらほら。
各々が独自の方法で暇をやりすごす。
只今、イスラエルの入国審査中。
そう、これは世界的に有名なイスラエルの入国審査放置プレイ。
それを満喫中なのだ。
国柄もあり、入国審査が異様なまでに厳しいイスラエル。
前に通り過ぎたヨルダンの国境とは比べ物にならない。
パスポートにイスラエルと敵対関係にあるイスラム諸国
(イラク・サウジアラビア・シリア・・etc)のスタンプがあると審査官からの質問の数は倍増し、
放置される時間もかなり長くなる。場合によっては入国拒否を食らう可能性もある。
その逆も然り。
もしパスポートにイスラエルのスタンプがあれば、
上記のイスラム諸国への入国はできない。(エジプト・ヨルダンはOK)
なので、イスラエルの後にアラブ諸国を周りたい旅人は、
パスポートにイスラエルの入出国スタンプがあってはならない。
ではどうするのか?答えは意外とシンプル。
スタンプはパスポートではなく別紙に押してもらうのです。(大抵、出入国カード)
注意する点と言えば、
例え、イスラエルの入国スタンプがなくとも、
このキングフセイン橋でのヨルダン出国のスタンプがあれば、
自動的にイスラエルへの入国がばれるため、
スタンプ別紙はヨルダン出国時から維持しなければいけない。
同じ理由でイスラエル経由でエジプトへ行くこともできない。
(エジプトの入国スタンプがイスラエル出国を意味する為)
なので、オレはヨルダン→イスラエル→ヨルダンのルート。
これでパスポートにはイスラエル出入国の痕跡ゼロ。
ヨルダン・イスラエルの国境であるキングフセイン橋までは
アンマン中心部にあるアブダビ・バスターミナルから乗り合いタクシーで。
乗客も割とすぐ集まり、すぐに出発できた。
ヨルダン側は割とスムーズに行き、
別紙に出国スタンプを押してもらう。(むしろ向こうから聞いてくれるくらい)
その後は、バスに乗りイスラエル側へと移動。
ここからが本番。
まずは荷物を預ける。
バックパックなどの荷物は入国完了するまで完全に手元を離れる。
ので、暇つぶし用品はあらかじめプラのバックに入れて持ち運ぶ。
金属探知機や空気がパシュっ!と出る機械のチェックを受け、
いよいよ審査官の元へ・・・
この審査官はほどんどが、
20代前半の女性。(美人と評判)
高圧的な態度で質問されるのでMっ気のある人間には至福のひと時。
ありがちな質問が終わった後は、
予想通り、シリアビザを突いてきた。
なんでシリアに行った?
どれくらい滞在した?
シリアで何をした?
何でそこまでお前に言わんといかんのや
と心ではつぶやくが、
顔は無垢な子犬を演じる。
英語も喋れないほうが、
相手もめんどくさがって質問が長引かないと聞いていたので、
適度に理解していないフリをしつつ答えは一単語で済ます。
じゃそこで待ってなさい。
と高圧的に命令され、
無垢な子犬は喜びを感じながら(感じてない)
ロビーのベンチに腰を下ろす。
こうして放置プレイが始まったのだった・・・
この待たされている間は、
監視されている為、そわそわしてはいけない。(怪しまれる)
と言うが、普通イミグレで何十分も放置されたら、
そわそわするのが普通ではないのだろうか?
逆に確信犯の人間ほど、慌てず平然を装うのが常ではないのか?
そんなこんなをしばらく頭の中で考えていると、
ようやく質問係の男がやってきて、
先ほど受けた質問と同じような質問を機械的に繰り返した。
無垢な子犬の演技は上々で、
質問もすぐ終わった。
運の悪い人は、とことん根掘り葉掘りと聞かれるらしいのだ。
おじいさんの名前。日本での職業。年収。
実家の住所。両親の職業。携帯の番号。etc...
この後、ようやくチェックが終わり、
最後に、スタンプは別紙にお願いね。と頼むと、
快くではないが、別紙に入国のスタンプを押してくれた。
こればかりは、審査官に決定権を握られている。
懇願したにもかかわらず、パスポートに押された人も多い。
運。らしい。
久々に見る自分の荷物と合流し、
イミグレの出口へと向かう。
ここで、入国スタンプを確認されることがあり、
別紙の場合、回収されることもあるのだが、
あとあと面倒なことにもなりかねないので、
このスタンプの押された別紙はキープしておこう。
ここまで約1時間半。
まあまあかな?
イスラム諸国を多く訪れた旅行者などは、
数時間、6~8時間も放置されることもあるのだ。
(実際に8時間待たされた人にあった)
幸い、オレはシリアだけだったので、
この時間だったのかもしれない。
いや、というか無垢な子犬だからか。
エルサレム行きの乗り合いバスに腰を下ろしほっと一息。
別紙に押されたイスラエルの入国スタンプを眺め
この国で何を見ることになるのだろうと想像をふくらます。
バンのドアが勢いよく閉まり、聖地エルサレムへ向け出発した。
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待たされるのは嫌いなの
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